#3: IL-4がかゆみに関与?! (1)
今日は2017年に発表され、アトピー性皮膚炎業界でも話題になった論文を紹介します!
免疫系ではたらくと考えられてきたIL-4シグナルが、かゆみの惹起にも関わることを示した論文です。
参考文献:
概要
哺乳動物は、侵入する病原体や有害な環境刺激を取り除くためにくしゃみやかゆみなどの神経生理学的反射を進化させてきた。
これらの反応が喘息やアトピー性皮膚炎などの慢性炎症性疾患と関連していることはよく知られているが、かゆみなどの感覚を促進する炎症経路のメカニズムは依然として不明である。
本研究では、タイプ2サイトカインがマウスとヒトの両方の感覚ニューロンを直接活性化することを示した。
さらに、慢性的なかゆみは神経IL-4RaおよびJAK1シグナリングに依存していることを実証した。
また、他の免疫抑制療法で効果がない難治性の慢性かゆみ患者がJAK阻害剤で治療されると著しく改善することも観察された。
したがって、免疫系に作用すると考えられてきたシグナル経路が、神経系の新しい治療標的を示唆している可能性がある。
総じて、この研究は、感覚神経系が古典的な免疫シグナル経路を利用して哺乳動物の行動に影響を与える進化的に保存されたパラダイムを明らかにしている。
何がわかっていて何がわかっていなかったか?
免疫系と神経系の相互作用
腸・肺・皮膚など複数の上皮表面で免疫系と神経系の相互作用があることは知られており、それらはくしゃみやかゆみといった行動を惹起することで異物の排除に寄与することは知られていた。
一方でこれらの反応の調節異常が感覚機能の異常、特に慢性的なかゆみの促進要因となるかどうかはまだ十分に理解されていない。
慢性的なかゆみのメカニズム
慢性的なかゆみとは、かゆみの症状が6週間以上続くものと定義され、人口の約15%に影響を与え、生活の質に深刻な影響を与える。
慢性的なかゆみはアトピー性皮膚炎(AD)などの多くの主要な炎症性皮膚疾患の中心的な特徴である一方で、さまざまな病態や多くの神経病態に二次的に現れることもある。
さらに、慢性的なかゆみは既知の病態プロセスがない状態でも発生し、この場合、「慢性特発性かゆみ(CIP)」と呼ばれている。
皮膚の炎症がかゆみを引き起こすことは広く認識されている。たとえば、かゆみ物質のヒスタミンは、じんましんの状態で急性のかゆみと関連している。さらに、以前に同定されたサイトカインでかゆみ物質であるインターロイキン(IL)-31は、AD関連のかゆみと関連付けられている。
驚くべきことに、発症率が高く、生活の質に与える負担が大きいにもかかわらず、現在、慢性的なかゆみの治療に特に適した薬物は存在しない。
さらに、炎症性媒介物質がかゆみの感覚をどのように促進するかの正確なメカニズムはまだ十分に定義されていない。
アトピー性皮膚炎におけるTh2系免疫反応の関与
ADでは、タイプ2サイトカインであるIL-4、IL-5、およびIL-13が皮膚の炎症を促進することが知られている。
さらに、IL-4またはIL-13を皮膚で過剰発現させるマウスは、AD様の疾患と強力な慢性かゆみを発症する。
特に、最近承認されたモノクローナル抗体であるデュピルマブは、IL-4およびIL-13の共有受容体サブユニットであるIL-4Raをブロックすることにより、ADの治療において驚異的な効果を示す。
これらの典型的な炎症性メディエーター(IL-4/5/13)がかゆみを惹起させる物質としても機能するかどうかは依然として不明である。
さらに、免疫系と神経系を横断し、慢性的なかゆみの治療に対する標的となる可能性があるかどうかも未調査である。
*次回予告*
さて、このように免疫系と神経系の相互作用についてはまだまだ謎が残っていますが、その問題に対してこの論文の著者らがどのようにアプローチしていったかを、次回は紹介します。
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